1987年11.19後楽園ホール大会。
マサ斎藤&長州力&ヒロ斉藤vs前田日明&木戸修&高田延彦の試合中に、前田選手が長州選手の顔面を蹴撃。
このキックで右目に大ダメージを受けた長州選手は「眼底打撲で全治2週間の欠場」
蹴った前田選手は、「無期限出場停止、自宅謹慎処分」となりました。
アントニオ猪木選手は前田選手に対し
「卑怯千万。プロレス道に悖る」とコメント。
悖る(もとる)とは道理に背く、人の道に反するという意味で、プロレスラーとしてあるまじき行為と非難しました。
「有田と週刊プロレスと#23」のテーマとなる「顔面襲撃事件」を深堀していきます。
前田日明と長州力の歴史
1983年のシングルマッチ
前田選手と長州選手は1983年にシングルマッチを行っています。
結果は長州選手がサソリ固めでレフリーストップ勝ち。
この試合で長州選手は前田選手に対し、長時間サソリ固めをかけ続けていました。
前田選手をサソリ固めでガッチリととらえる。
その後、自ら技を解きロープに降ってのリキラリアット。
この時点で3カウント奪えたように見えますが、トドメのサソリ固めでレフリーストップに追い込みました。
前田選手は2019年のインタビューで
「(長州は)ガチッと極めて、俺からギブアップを取りにきた。これはマッチメイク破りだから、カチンときた。俺はこの試合で腰を痛めたんだ」
と語っています。
この試合のダメージが重く、前田選手は欠場に追い込まれました。
第一次UWF
1984年新日本プロレスの別ブランドとして、ユニバーサル・レスリング連盟(UWF)が旗揚げされます。
当初は猪木選手をはじめとする、新日本プロレスの看板レスラーが参戦予定でした。
しかし蓋を開けてみると、前田選手・藤原組長・高田延彦選手ら若手を中心とするレスラーが中心の興行。
旗揚げ当初から苦戦を強いられます。
UWFは団体のスポンサー集めに苦労し、旗揚げの翌年の1985年には古巣新日本プロレスと業務提携をします。
1986年から新日本プロレスに参戦。
当初はUWFと新日本プロレスが対等な関係での業務提携でしたが、徐々に新日本プロレス側に都合のいいような契約を突き付けたと言われています。
前田選手からしたら、会社の指示でUWFに移籍したのに出戻りという形になってしまっている。
「新日本プロレスの都合に振り回されている」という感情があったのかもしれません。
ジャパンプロレス旗揚げ
一方で長州選手は維新軍を率いて新日本プロレスを退社。
1984年にジャパンプロレスを旗揚げし、全日本プロレスに活動拠点を打つします。
この時長州選手は新日本プロレスとの契約が残っている状態で全日本プロレスに移籍。
全日本プロレス側が違約金を支払ったと言われています。
全日本プロレスではライバル天龍源一郎選手と死闘を演じる長州選手。
1985年には鶴田選手との試合でプロレス大賞のベストバウトを獲得。
他にも
- キラーカーン選手とのタッグでAWA世界タッグ王座
- NWA世界ヘビー級王座
- 谷津選手とのタッグでインターナショナルタッグ王座
- PWFヘビー級王座
と棚橋選手も引くぐらいのベルトコレクターっぷりを発揮します。
しかし、ライバル天龍選手との試合以外には興味がなくなったのか、徐々に新日本プロレスに気持ちが動きます。
そして1987年には全日本プロレスとの契約を残したまま新日本プロレスに復帰。
前年に新日本プロレスに復帰していた前田選手と再び再開します。
前田・長州の共闘時代
長州選手は新日本プロレスに復帰後、世代闘争を仕掛けます。
この抗争を仕掛けたのが長州選手。
しばらくは前田選手・長州選手は藤波選手と共に猪木選手や坂口征二選手のような上の世代に噛みつきます。
しかし長州選手は猪木の首を獲るのは俺だ!
と宣言し、パートナーの藤波選手にラリアット。
世代闘争は終了します。
この事件は前田選手からしたら
「勝手に世代闘争を仕掛けて、勝手に終わらせやがった」
と長州選手への不信感があったことでしょう。
顔面襲撃事件!
そして問題の試合が行われます。
この試合の前に前田選手は、全日本プロレスで行われた「天龍vs輪島」の試合をテレビで見たそうです。
輪島選手の顔面を思いっきり蹴っ飛ばす天龍選手を見て「新日本プロレスやUWFよりも天龍選手は過激なプロレスをしている」と危機感を持ったそうです。
天龍・輪島よりも激しいプロレスを見せなくてはいけない。
前田・長州ならもっと高みに行ける。
と感じたのかは分かりませんが、前田選手は長州選手との激しい戦いを求めて渾身の一撃を喰らわせます。
6人タッグできっかけを作れば、シングルマッチが組まれる。
1983年のレフリーストップの屈辱を晴らせると。
しかしこの試合後前田選手は新日本プロレスを離れることになります。
1988年2月、前田選手は解雇されました。
長州選手は新日本プロレスの現場監督となり、前田選手は第2次UWFを旗揚げします。
昭和から平成へと変化する時代に起きた事件です。
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どの回も面白いです!
そんな感じで。
でわ!